瞑想2014

職場でのマインドフルネスを含む多要素健康介入が業務エンゲージメントとメンタルヘルスに与える効果:RCT の結果

Effectiveness of a Worksite Mindfulness-Related Multi-Component Health Promotion Intervention on Work Engagement and Mental Health: Results of a Randomized Controlled Trial

van Berkel J, Boot CRL, Proper KI, Bongers PM, van der Beek AJ.PLoS ONE

論文ページを開く(doi:10.1371/journal.pone.0084118

「混ぜすぎ」の職場介入では、瞑想の効果は埋もれる

van Berkel et al., 2014

実験内容

オランダの職場勤労者を対象とする RCT。介入群には「Mindful VIP」と呼ばれる多要素プログラム(週1回90分・全8回のグループマインドフルネス研修+自宅課題約30分/日・週5日+8回の e コーチング+階段使用促進・無料果物などの環境ナッジ)を提供。対照群は通常の業務継続。6ヶ月後と12ヶ月後の業務エンゲージメント・メンタルヘルス・回復必要性・マインドフルネスを比較した。

結果

6ヶ月後・12ヶ月後とも、業務エンゲージメント・メンタルヘルス・回復必要性・マインドフルネスのいずれにも介入群と対照群の有意差は認められなかった。研修参加率(compliance)の高低で分けたサブグループ解析や、ベースラインのエンゲージメント水準で分けた解析でも、有意な差は確認されなかった。

補足

デザイン
RCT・職場介入(オランダ)
介入
8週グループ研修(週90分)+ 宿題30分/日×5日 + eコーチング8回 + 環境ナッジ
追跡
6ヶ月・12ヶ月
主要アウトカム
業務エンゲージメント / メンタルヘルス
マインドフルネス研修
宿題(30分/日)
eコーチング
環境ナッジ
6・12ヶ月後:業務エンゲージメント/メンタルヘルス
有意差なし

van Berkel, J., Boot, C. R. L., Proper, K. I., Bongers, P. M., & van der Beek, A. J. (2014). Effectiveness of a Worksite Mindfulness-Related Multi-Component Health Promotion Intervention on Work Engagement and Mental Health: Results of a Randomized Controlled Trial. PLoS ONE, 9(1), e84118. doi:10.1371/journal.pone.0084118

概要

マインドフルネスが職場で効くという報告が増える一方で、必ずしも常に効くわけではない、というネガティブデータも存在する。本研究はその代表的な一例であり、オランダの職場勤労者を対象に、「Mindful VIP」という多要素健康介入を1年間追跡した大規模 RCT である。

介入は単なる瞑想プログラムではなく、(1) 週1回90分・全8回のグループ形式のマインドフルネス研修、(2) ボディスキャンや坐瞑想などのフォーマルな宿題と、PC 起動時の呼吸法・買い物中のマインドフルネスといったインフォーマルな宿題(約30分/日・週5日)、(3) その後8回の e コーチング、(4) 階段使用の促進や職場での無料果物提供といった環境ナッジまでを含む、いわば「全部入り」のパッケージであった。対照群はそのまま通常業務を続け、6ヶ月後と12ヶ月後に業務エンゲージメント・メンタルヘルス・回復必要性・マインドフルネスが評価された。

結果はネガティブだった。介入群と対照群の間に、いずれのアウトカムでも有意差は認められなかった。研修への参加率が高いサブグループに絞っても、ベースラインのエンゲージメント水準で層別しても、効果は浮かび上がらなかった。

ここで重要なのは、「だから瞑想は職場で効かない」と早合点しないことである。本研究自体や、その後の研究が示唆する「効かなかった理由」はいくつかある。第一に、介入が多要素すぎたこと。マインドフルネス研修・宿題・eコーチング・環境ナッジが同時に走るため、純粋なマインドフルネスの寄与を分離できず、どれもが中途半端な用量になりがちである。第二に、コンプライアンスの問題。グループ研修は職場の業務時間に組み込まれづらく、宿題の30分/日・週5日も多忙な勤労者には負担が大きい。第三に、追跡期間が6〜12ヶ月と長く、介入直後にあったかもしれない短期的効果は、その間に薄まってしまう。第四に、アウトカムが業務エンゲージメントというマクロな指標であり、注意やストレスのような瞑想がもっとも効きやすい近位の指標は主要アウトカムではなかった。

メタ分析(例:Bartlett et al., 2019)で職場マインドフルネスが平均としては中〜大きい効果を示すことを踏まえると、本研究の意味は「マインドフルネスは効かない」ではなく、「多要素にまとめて、用量も追跡もアウトカムも揃わない介入では効果は埋もれる」というネガティブだが極めて重要な指摘だ、と読み替えるのが妥当である。

TUNEプロジェクトは、瞑想を「やったかどうか」だけで評価するのではなく、どのくらい集中できていたか、どんな脳波の変化が起きたかを客観指標で追えるようにすることで、こうした「効いたか効いていないか分からない」状態から抜け出すことを目指している。本論文は、その必要性を強く支持するネガティブデータとして位置づけられる。