瞑想2018

短時間のマインドフルネス瞑想は初学者の注意を改善する:ERP と神経症傾向による調整

Brief Mindfulness Meditation Improves Attention in Novices: Evidence From ERPs and Moderation by Neuroticism

Norris CJ, Creem D, Hendler R, Kober H.Frontiers in Human Neuroscience

論文ページを開く(doi:10.3389/fnhum.2018.00315

たった10分の瞑想で、初学者の注意は変わる

Norris et al., 2018

実験内容

瞑想未経験の大学生を、10分間のマインドフルネス音声を聴く群と、同じ長さの対照音声(セコイアに関する解説)を聴く群に無作為に振り分け、その直後にフランカー課題(Study 1)あるいは注意ネットワーク課題(ANT, Study 2)を実施。同時に脳波(ERP)の N2・P3b 成分を記録し、神経症傾向(neuroticism)による効果差も検討した。

結果

瞑想群はフランカー課題の不一致試行で正答率が向上し、反応時間に低下はなかった。ANT では瞑想群の反応時間が対照群より速く、精度も維持された。ERP では神経症傾向の低い参加者で不一致試行に対する N2 が大きくなっており、競合検出の神経処理が強化された可能性が示された。

補足

参加者
瞑想未経験の大学生(Study 1・Study 2)
介入時間
単回・10分(音声誘導)
対照
同尺の中立的な解説音声(セコイア)
計測
フランカー課題 / ANT、ERP(N2・P3b)
10分間の介入 → フランカー課題(不一致試行 正答率)
対照音声
瞑想音声
反応時間の低下はなし/低神経症傾向で N2 増大

Norris, C. J., Creem, D., Hendler, R., & Kober, H. (2018). Brief Mindfulness Meditation Improves Attention in Novices: Evidence From ERPs and Moderation by Neuroticism. Frontiers in Human Neuroscience, 12, 315. doi:10.3389/fnhum.2018.00315

概要

瞑想の効果を語るとき、しばしば「数週間以上の継続的な訓練が前提」と説明されがちである。しかし日常の入口として現実的なのは、もっと短く、初学者でも始められる介入である。本研究は、瞑想未経験の大学生に対し、たった10分間の音声誘導マインドフルネスを行うだけでも、直後の注意機能と脳活動に意味のある変化が生じるかを検証したものだ。

Study 1 では参加者を、10分間のマインドフルネス音声を聴く群と、同じ長さで似た声質の中立的音声(セコイアの解説)を聴く群に無作為に振り分け、直後にフランカー課題を実施した。フランカー課題は、中央のターゲット矢印を両側のフランカー矢印が邪魔する不一致試行で、注意の競合解決を測る古典的な指標である。結果、瞑想群は不一致試行で対照群より正答率が高く、しかも反応時間は遅くなっていなかった。これは、速度を犠牲にせず精度を上げる「リソース配分の改善」が10分で起きたことを意味する。

Study 2 では同じ枠組みで注意ネットワーク課題(ANT)を行い、瞑想群は対照群より反応時間が短く、性能の低下もなかった。さらに ERP(事象関連電位)で N2 成分を解析したところ、神経症傾向の低い参加者では瞑想後に不一致試行への N2 が大きくなり、競合検出の神経処理が強まったことが示された。神経症傾向の高い参加者ではこの効果は見られず、同じ10分の瞑想でも、本人の特性によって脳の応答の出方が違うこともわかった。

この結果は、瞑想を「長期訓練しないと効かないもの」と考える前提を緩める。10分という、誰でも気軽に試せる時間枠の中で、行動レベルでも神経レベルでも変化が観察される。一方で、誰に効くかは個人差があり、すべての人に同じだけ効くわけではないことも同時に示された。

TUNEプロジェクトは、瞑想を「やる気と根性で長く続けるもの」ではなく、自分の脳の応答を可視化しながら短いセッションでも何が起きているかを確かめられる仕組みを目指している。本論文は、その短時間アプローチに科学的な後ろ盾を与えるとともに、「誰に・どのやり方が効くか」を脳波から見つける必要性を示すエビデンスでもある。