概要
「ニューロフィードバックは注意を高めるのか」という問いは、TUNE のようなプロジェクトが最も知りたいはずの問いの一つだが、個別の RCT は結論がまちまちで、まとめて見たときの実態は曖昧だった。本論文は、健常成人を対象とした注意パフォーマンス向上目的の NF 訓練の並行群間 RCT を系統的に集め、現時点での集約効果を推定したメタ分析である。
レビュー全体では41件の RCT が抽出され、定性的な整理の対象となった。このうち効果量算出に十分なデータがあった15件(計569名)が定量的なメタ分析の対象となり、全体の効果量はランダム効果モデルで SMD = 0.27(95% CI 0.10–0.44)と算出された。これは統計的に有意で、小〜中の効果量に相当する。すなわち、NF が平均としては健常成人の注意を改善することは支持される。
しかし、本論文はもう一歩踏み込む。対照群が「シャム NF」── つまり実際の脳活動とは無関係なフィードバックを偽として受ける ── である 8件だけを取り出してサブ解析したところ、集約された効果は有意ではなかった。シャム条件は、画面を見つめて練習を反復するという「やる行為」そのものや、被験者の期待効果・関与効果を NF 群と揃えるためのもので、もしシャム比較で差が出ないなら、観察された全体効果の少なくとも一部は NF に特異な脳変調ではなく、これらの非特異要因によって説明されうる、ということになる。
この知見の意味は、NF への期待を下げることではない。むしろ、これまでの NF 研究の多くが対照条件として「何もしない」「待機リスト」を採用してきたことの限界を指摘し、今後はシャム比較を含む厳密な RCT を増やすべき、という方向性を示すものだ。さらに、効果が安定して観察される具体的なプロトコル(電極位置・周波数・セッション数)の特定も、これからの課題として残されている。
TUNEプロジェクトは、NF を「絶対に効く魔法」として広めるのではなく、本人の脳波と認知状態の対応関係を可視化し、再現性を確かめながら使っていく道具として位置づけたい。本論文は、その姿勢を支えるうえで欠かせない「現時点でわかっていること/まだ証拠が足りないこと」を率直に整理してくれる現状報告であり、TUNE 自身が今後生み出すデータの設計指針にもなる重要なエビデンスである。