ニューロフィードバック1978

アルファ波バイオフィードバックによる不安低下は、高不安者にのみ見られる

Anxiety Change Through Electroencephalographic Alpha Feedback Seen Only in High Anxiety Subjects

Hardt JV, Kamiya J.Science

論文ページを開く(doi:10.1126/science.663641

アルファ波が上がるほど、不安は下がる ─ ただし、高不安者で

Hardt & Kamiya, 1978

実験内容

特性不安が高い参加者と低い参加者を対象に、脳波のアルファ活動を増加させる訓練と抑制する訓練のそれぞれをフィードバックを与えながら実施。複数セッションにわたるアルファ変化と、訓練前後の不安スコアの変化を群ごとに対応づけて検討した。

結果

アルファの増減自体は両群とも変調可能であり、むしろ低不安者の方が変調幅は大きかった。しかし、アルファ増加が不安低下と、アルファ抑制が不安上昇と密接に対応していたのは高不安者のみであり、低不安者ではアルファ変化と不安はほぼ無相関だった。少なくとも5時間程度の継続的なフィードバック訓練が不安治療に有用であると示唆された。

補足

参加者
特性不安の高低で振り分けた健常成人
介入
アルファ増加 / 抑制のフィードバック訓練
評価
アルファ振幅の変化量と不安スコア変化の対応
示唆
5時間以上の継続的訓練が不安治療に有用
アルファ増加訓練 → 不安スコア変化
高不安群
↓ 大
低不安群
≒ 0
低不安群はアルファ変調自体は得意だが、不安の変化は伴わなかった

Hardt, J. V., & Kamiya, J. (1978). Anxiety Change Through Electroencephalographic Alpha Feedback Seen Only in High Anxiety Subjects. Science, 201(4350), 79–81. doi:10.1126/science.663641

概要

本論文は、ニューロフィードバック(NF)研究の出発点の一つとされる古典である。脳波の特定の周波数帯を被験者にリアルタイムで提示し、自発的にその振幅を増減できるよう訓練する、というアプローチが「不安」という臨床的に意味のあるアウトカムに対して本当に効くのかを検証した最初期の科学的検証にあたる。

デザインはシンプルかつ示唆に富む。特性不安が高い人と低い人を対象に、脳波のアルファ活動を「増やす」訓練と「減らす」訓練の両方を、フィードバック付きで複数セッションにわたり実施した。これにより、(1) そもそも人はアルファを意識的に変調できるのか、(2) アルファの変化が情動状態の変化と本当に結びつくのか、という二つの問いを切り分けて答えることができる。

結果のうち、(1) については両群とも実現可能で、むしろ低不安者の方が変調幅は大きかった。これは「低不安者は NF が下手だ」というわけではないことを意味する。注目すべきは (2) で、アルファ増加が不安低下と、アルファ抑制が不安上昇と密接に対応していたのは高不安者のみであり、低不安者ではアルファと不安はほぼ独立に動いた。

この非対称性の意味は大きい。NF の効果を評価するうえで「全員に同じだけ効くか」ではなく、「症状が高い人ほど、生理指標の変化が情動の変化に直結する」というマッチング構造を持つ可能性を示しているからだ。同時に、本論文は「少なくとも 5 時間以上の継続的訓練」が不安低減に必要だとも指摘し、NF が一回限りで効くものではないという現実的な目安も与えた。

TUNEプロジェクトは、誰もが同じ目標値を目指すのではなく、自分の今の状態に対して脳波がどう動くかを見ながら最適なやり方を見つけることを目指している。そのとき参考にすべきは「平均的にどう効くか」ではなく、本論文が初期に明らかにしたような「誰に何が効きやすいか」という個人差の構造である。