瞑想2025

マインドフルネス瞑想実践のウェルビーイングへの用量反応効果を検証したRCT

A randomized controlled trial exploring dose-response effects of mindfulness meditation practice on wellbeing

Bowles NI, Burger A, Davies JN, Galante J, Van Dam NT. — PsyArXiv (preprint)

論文ページを開く(doi:10.31234/osf.io/c86da)

※ 紹介している研究の多くは、TUNE とは異なる機器・方法(瞑想の研修、研究用の装置など)を用いたもので、TUNE の効果を示すものではありません。TUNE は医療機器ではなく、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。

『長く座る』より『続けられる長さ』のほうが効く

Bowles et al., 2025 (preprint)

実験内容

オンライン 4 群並行 RCT。瞑想未経験のオーストラリア在住健常成人(18〜64歳)716名を、1 日 4 分(active control)/10 分/20 分/30 分の 4 群に無作為割付し、28 日間の自宅ガイド瞑想プログラム(Mahasi 系伝統に基づく Patrick Kearney の音声)を実施。主要アウトカムは WEMWBS(ウェルビーイング)、副次アウトカムは FFMQ・NAS-7・EQ・EQUA-S・PROMIS Depression/Anxiety・K10・RNT・DERS-SF の 9 尺度。事前登録は ClinicalTrials.gov NCT06378450 と OSF osf.io/dcqa6。ITT では constrained longitudinal linear mixed model、per-protocol では IPW を用い、探索的解析では 5 種の練習量指標を PCA した「エンゲージメント因子」と 4 種の期待/動機を予測子として全 10 アウトカムに回帰。

結果

T0→T1 で全 10 アウトカムに有意な改善が生じた(|SMD| = 0.29–0.56, pFDR < .05)。割付用量による用量反応効果は認められず、主要アウトカム(ウェルビーイング)で group × time の尤度比検定は χ²(3) = 1.72, p = 0.63、副次アウトカムでも同様に n.s.(per-protocol でも emotion regulation の χ²(3) = 9.67, p = 0.022 が FDR で消失)。セッション完遂率は 4分 71.4%/10分 68.5%/20分 55.1%/30分 41.6% と用量に反して単調に低下。探索的解析では、実際の練習エンゲージメント(PCA因子)が 10 アウトカム中 8 つで有意(|β|=0.05–0.14)、目標達成への自信(goal confidence)が 9 つで有意(|β|=0.08–0.21)に改善を予測した。有害事象は 17.6% が「難しい/苦しい体験」を報告したが、機能障害を伴うものはわずか 2.4% で追跡不要と判定された。

補足

参加者
瞑想未経験の健常成人 716名(18〜64歳・在豪)
群
1日 4/10/20/30 分(4 分は active control)× 28 日オンライン
主要アウトカム
WEMWBS(ウェルビーイング)+ 副次 9 尺度
事前登録
ClinicalTrials.gov NCT06378450 / OSF osf.io/dcqa6
28 日間の用量別セッション完遂率(%)
4 分/日
71.4%n=182
10 分/日
68.5%n=176
20 分/日
55.1%n=177
30 分/日
41.6%n=181
用量が増えるほど完遂率は下がる。それでも改善効果は用量群間で差がなかった(すべての outcome で p>.05)

Bowles, N. I., Burger, A., Davies, J. N., Galante, J., & Van Dam, N. T. (2025). A randomized controlled trial exploring dose-response effects of mindfulness meditation practice on wellbeing. PsyArXiv. doi:10.31234/osf.io/c86da

概要

「瞑想は長くやるほど効くのか」──これは瞑想アプリの開発者から臨床のガイドライン策定者まで、誰もが一度は突き当たる問いである。しかし驚くほど、この問いに正面から答えた大規模 RCT はこれまで存在しなかった。既存のメタ分析では相関がわずかに出るものと出ないものが混在し、実験的に用量を割り振った少数の研究はどれも 2 週間以下、サンプルサイズも十分ではなかった。本論文はこの空白に、事前登録された 716 名規模の並行群間 RCT で正面から答えようとしたものだ。

オーストラリアの瞑想未経験成人 716 名(18〜64 歳、女性 82.5%)が、1 日 4 分(active control)/10 分/20 分/30 分のいずれかに無作為割付され、28 日間のオンライン・マインドフルネス・プログラムに参加した。プログラムは Mahasi 系の伝統を継ぐ豪州の指導者 Patrick Kearney によって開発されたもので、4 群とも同じ構造・同じ進行・同じ内容を保ちながら、教示と練習の長さだけを操作的に変えている。データは Qualtrics で完全にリモート収集、主要アウトカムは WEMWBS(ウェルビーイング)で、これに FFMQ・NAS-7・EQ・EQUA-S・PROMIS Depression/Anxiety・K10・RNT・DERS-SF の 9 尺度を副次に据えた。統計計画は ClinicalTrials.gov(NCT06378450)と査読付きプロトコル論文で事前登録済み、コード・データは OSF(osf.io/dcqa6)で公開している。

結果は明快で、かつ二段構えで読み解く必要がある。まず「時間の主効果」は明確に出た。T0 から T1 にかけて 10 アウトカムすべてで統計的に有意な改善(|SMD| = 0.29–0.56, pFDR<.05)が生じており、瞑想プログラム自体は総じて効果を持っていた。しかしその効果は用量に依らなかった。主要アウトカムでの group × time の尤度比検定は χ²(3) = 1.72, p = 0.63 と完全に n.s.。副次 9 尺度でも同様に n.s.、per-protocol サンプルで再解析しても emotion regulation の一つが χ²(3) = 9.67, p = 0.022 と表面上有意に見えるだけで、FDR 補正で消えてしまう。少なくとも「初心者が 4 週間、1 日 30 分やる方が 4 分より効く」という直観的な期待は、量的に支持されなかった。

この null 結果を単なる「効果なし」で終わらせないのが、著者たちの手つきの巧いところである。まずセッション完遂率を用量群別に見ると、驚くほどきれいな単調低下が観測される:4 分 71.4%、10 分 68.5%、20 分 55.1%、30 分 41.6%。つまり用量を長くすると、実際に完遂できる参加者の割合が下がる。累積練習時間の平均も 4 分群 76 分から 30 分群 337 分まで確かに増えるが、標準偏差(それぞれ 76・85・176・272 分)は用量に応じて跳ね上がり、20 分群と 30 分群の平均累積時間はもはや有意には差がつかなくなる(p = 0.19)。「30 分やるように指示すること」と「実際に 30 分やること」の間には、指示するほど深まる乖離がある。

探索的解析では、割付用量ではなく「実際にどれだけ関われたか」を軸に据え直す。5 種類の練習量指標に PCA をかけると、第 1 成分(分散の 66.3% を説明)にすべての指標が均等に載る「一般的な練習エンゲージメント因子」が抽出される。これと 4 種の期待/動機指標を、時間と割付群を統制した混合効果モデルに入れると、時間の主効果は 10 アウトカムすべてで有意(|β| = 0.42 平均)、練習エンゲージメントは 8/10 で有意(|β| = 0.05–0.14)、そして「自分がこの目標を達成できるという自信(goal confidence)」は 9/10 で有意(|β| = 0.08–0.21)に改善を予測した。逆に「一般的なベネフィットへの期待」「動機の強さ」「目標達成の見込みの高さ」はほぼどのアウトカムも予測しなかった。用量を上げるより、続けられる長さで確実に続け、自分が変われると信じてやれる状態を保つほうが、この初心者・4 週間・オンラインという文脈では効いた、ということになる。

有害事象も、慎重に報告されている。17.6% の参加者が 4 週間のうち少なくとも 1 回「難しい/苦しい体験」を報告したが、機能に「多少」の影響が出たのは 12.7%、「中程度」の障害はわずか 2.4%(3 名)で、追跡調査が必要と判断された参加者はいなかった。オンライン・短期のマインドフルネスは、初心者集団において概ね安全な範囲にあるが、リスクゼロではないことを示す率直な数字である。

本論文は、瞑想を「効くはず」で終わらせず、また「効かなかった」で片づけもしない、実務的に極めて有用な立ち位置を取る。「長く座る」を勧める代わりに、「続けられる長さで確実に続ける」ことと、「自分は変われるはずだ」という自信を保つことを、初心者に対する第一原則として提案する。