概要
COVID-19 の流行下において、最前線で働く医療従事者の心身負荷は極めて高く、不眠・慢性的ストレス・燃え尽きが大きな問題となった。本パイロット試験は、ミラノのサッコ病院で実際に COVID-19 対応に携わっていた医師18名を対象に、集中的なアルファ増加ニューロフィードバック(NF)が、こうした急性ストレス環境における睡眠の質とストレス調整に資するかを検討したものだ。
プロトコルは、2週間で計10セッションという「集中投入型」である。アルファ波(おおむね 8〜13 Hz 帯)はリラックスや内的注意状態に関連する周波数帯として知られており、その振幅を自発的に高められるよう、リアルタイムのフィードバックを通じて訓練していく。介入前(T0)と直後(T1)でアルファ振幅と PSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index:睡眠の質を多面的に評価する標準的な自己報告尺度)が測定された。
結果は明瞭で、T0 から T1 にかけてアルファ平均値が有意に上昇し、同じ期間で PSQI 総合スコアが有意に低下した。PSQI は高いほど睡眠が悪化していることを意味するため、スコアの低下は睡眠の質の改善を示す。安全性についても問題は報告されなかった。
ただし、これはあくまで対照群を持たないパイロット試験である点には注意が必要だ。プラセボ効果や時間経過による自然回復との切り分けは、より大規模な RCT を待つ必要がある。それでも、急性ストレス環境において NF が「許容可能で、短期間でも測定可能な変化を生み出す」介入であることを示したことには意義がある。
TUNEプロジェクトは、瞑想・NF を、医療現場のような高ストレス環境のセルフケアにも展開できる手段として位置づけたいと考えている。本研究は、その現場志向の応用に向けた最初の足がかりとして引用できる研究の一つである。