瞑想2013

集中型瞑想と観察型瞑想が健常者の注意ネットワーク機能に与える影響

The effect of focused attention and open monitoring meditation on attention network function in healthy volunteers

Ainsworth B, Eddershaw R, Meron D, Baldwin DS, Garner M.Psychiatry Research

論文ページを開く(doi:10.1016/j.psychres.2013.09.002

瞑想は、単なる安静とは異なる

Ainsworth et al., 2013

実験内容

健常成人を集中型瞑想(FAM)・観察型瞑想(OMM)・安静閉眼(コントロール)の3群に無作為に振り分け、約25分の単回介入を実施。介入の前後で注意ネットワーク課題(ANT)を行い、覚醒・定位・実行制御の3つの注意機能の変化を群間で比較した。

結果

集中型瞑想群では実行制御ネットワークの成績が、観察型瞑想群では定位ネットワークの成績が有意に改善した。一方、安静閉眼群ではいずれの注意機能にも有意な変化は見られなかった。瞑想技法の違いによって改善する注意機能が異なることが、単回介入でも明確に表れた。

補足

参加者
健常成人 82名(3群に無作為割付)
介入時間
単回・約25分
条件
集中型瞑想(FAM) / 観察型瞑想(OMM) / 安静閉眼(コントロール)
計測課題
Attention Network Test(覚醒・定位・実行制御)
集中型瞑想
実行制御 改善
観察型瞑想
定位 改善
安静閉眼
有意な変化なし

Ainsworth, B., Eddershaw, R., Meron, D., Baldwin, D. S., & Garner, M. (2013). The effect of focused attention and open monitoring meditation on attention network function in healthy volunteers. Psychiatry Research, 210(3), 1226–1231. doi:10.1016/j.psychres.2013.09.002

概要

本研究は、瞑想の効果が「目を閉じて休む」ことから生じるのか、それとも瞑想という技法そのものから生じるのかを、健常成人を対象に明確な対照群を置いて検討したものである。比較対象としての安静条件をきちんと設けた介入研究は当時まだ少なく、瞑想と単なる休息を分離して認知機能への影響を測った点に本研究の意義がある。

認知機能の評価には、Fan ら(2002)が開発した注意ネットワーク課題(ANT: Attention Network Test)が用いられた。ANT は、覚醒(alerting:これから来る刺激に身構える機能)、定位(orienting:空間的に注意を向ける機能)、実行制御(executive control:競合する情報を処理し正しい反応を選ぶ機能)という、Posner と Petersen の理論で独立とされる3つの注意機能を、1つのフランカー課題の中で同時に測定できるよう設計されている。試行ごとに、ターゲット出現の手がかり(cue なし/中央 cue/両側 cue/空間 cue)と、ターゲット矢印を取り囲むフランカー矢印の整合性(congruent/incongruent)が組み合わされ、参加者は中央のターゲット矢印が指す向きをできる限り素早く正確に判断する。各ネットワークの効率は、特定の条件間の反応時間差として算出される。

参加者は集中型瞑想群、観察型瞑想群、安静閉眼群の3群に無作為に振り分けられ、それぞれ約25分間の単回介入を受けた。集中型瞑想(focused attention meditation; FAM)は呼吸など特定の対象に注意を向け続ける技法、観察型瞑想(open monitoring meditation; OMM)は浮かんでくる思考や感覚に評価を加えずただ観察し続ける技法であり、注意の向け方が本質的に異なる。安静閉眼群(コントロール)は特定の指示を与えられず、目を閉じて座っているだけの状態であった。介入の前後で同じ ANT を実施し、3つの注意ネットワークそれぞれの変化が群間で比較された。

その結果、集中型瞑想群では実行制御ネットワークの成績が、観察型瞑想群では定位ネットワークの成績が、それぞれ有意に改善した。一方、安静閉眼群ではいずれの注意機能にも有意な変化は見られなかった。すなわち、瞑想の認知的効果は受動的な休息から自然と生まれるのではなく、「注意をどう向けるか」という技法そのものから生じること、そして技法の違いが改善する機能の違いとして現れることが、わずか25分の単回介入で明確に示されたことになる。

この知見は、瞑想を「とりあえずやってみる」ものではなく、目的に応じて選び・育てていくものとして捉え直す根拠になる。集中力を高めたいのか、外界への気づきを開きたいのかによって、選ぶべき技法は異なる。TUNEプロジェクトは、脳波という客観的な指標を通じて自分の状態と瞑想技法の関係を可視化し、一人ひとりに合ったやり方を見つけることを目指しているが、本論文はその方向性を支える基礎的なエビデンスの一つである。