瞑想2021

健常成人におけるマインドフルネス瞑想の注意・実行制御・ワーキングメモリへの効果:ランダム化比較試験のメタ分析

The Effects of Mindfulness Meditation on Attention, Executive Control and Working Memory in Healthy Adults: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials

Yakobi O, Smilek D, Danckert J.Cognitive Therapy and Research

論文ページを開く(doi:10.1007/s10608-020-10177-2

瞑想は健常成人の注意・実行制御を確かに高める

Yakobi et al., 2021

実験内容

健常成人を対象としたマインドフルネス瞑想介入の RCT を網羅的に検索・選定し、27件(計1,632名)を統合したメタ分析。アウトカムを注意(attention)・実行制御(executive control)・ワーキングメモリ(working memory)の3カテゴリーに整理し、それぞれについて瞑想群と対照群の標準化平均差(Hedges' g)を算出した。

結果

全体として小〜中の効果量(g ≈ 0.20)が観察され、内訳では注意(g = 0.18)と実行制御(g = 0.18)に有意な改善が認められた。一方、ワーキングメモリ容量への効果は有意でなかった。マインドフルネス瞑想は、注意を向ける・抑制する・切り替えるといった制御の効率を高めるが、保持できる情報量そのものは変えないことを示している。

補足

対象研究
RCT 27件(健常成人)
総参加者数
1,632名
効果指標
Hedges' g(標準化平均差)
ドメイン
注意 / 実行制御 / ワーキングメモリ
注意
0.18
実行制御
0.18
ワーキングメモリ
0.03
Hedges' g(最大 0.4

Yakobi, O., Smilek, D., & Danckert, J. (2021). The Effects of Mindfulness Meditation on Attention, Executive Control and Working Memory in Healthy Adults: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Cognitive Therapy and Research, 45(4), 543–560. doi:10.1007/s10608-020-10177-2

概要

単発の研究では、瞑想が注意に効くという報告と、効かないという報告がしばしば混在する。サンプルサイズの小ささ、課題の違い、対照群の質、介入の期間など、結論を揺らす要因が多いためだ。本論文は、健常成人を対象とした RCT を網羅的に集め、27件・延べ1,632名のデータをメタ分析することで、現時点で平均してどの程度の効果が期待できるのかを客観的に推定したものである。

分析はアウトカムを注意・実行制御・ワーキングメモリの3カテゴリーに分けて行われた。注意は「刺激への身構え/空間的な向け方」、実行制御は「競合する情報を抑える・切り替える」処理、ワーキングメモリは「一時的に情報を保持し操作する」容量に対応する、いずれも認知機能の基盤となる指標である。

結果、全体の効果量は g ≈ 0.20(小〜中)であり、内訳としては注意(g = 0.18)と実行制御(g = 0.18)に有意な改善が認められた。一方、ワーキングメモリ容量については効果が確認されなかった。これは、マインドフルネス瞑想が「注意を向け・保ち・切り替える」コントロールの効率を底上げするが、保持できる情報量そのものを増やすわけではないという、機能ごとに切り分けた見方を支持する結果である。

効果量自体は劇的に大きいわけではないが、健常成人を対象とした RCT のメタ分析で安定して観察されたという点に意義がある。臨床集団でなく、もともと健康な人でも、瞑想で「注意の制御」は改善しうる。逆に言えば、ワーキングメモリのような別の側面まで一括りに「瞑想で頭が良くなる」と語ることには慎重であるべきだ、ということでもある。

TUNEプロジェクトは、瞑想を漠然と勧めるのではなく、何にどれくらい効くのか・誰にどう効くのかを脳波という客観指標で可視化しながら最適化することを目指している。本メタ分析は、その「注意の制御を高める」という TUNE が掲げる方向性を、量的根拠から裏付ける一本である。